さく内科健康情報レター
2025年7月
ビタミンDは脂溶性ビタミンの一種で、私たちの体に様々な重要な役割を果たしています。特に注目すべきは、単なる「骨のビタミン」ではなく、全身の健康に関わる「ホルモン様物質」として機能することです。最新の研究によると、私たちの体のほぼすべての細胞や組織にビタミンD受容体が存在し、約200〜2,000もの遺伝子の働きを調節していることが分かっています。
ビタミンDは主に以下の2つの方法で体内に取り込まれます:
ビタミンDは、肝臓で25-ヒドロキシビタミンDに変換され、さらに腎臓で活性型の1,25-ジヒドロキシビタミンDに変換されて、体内で様々な働きをします。
ビタミンD欠乏症は世界中で最も一般的な栄養不足の一つで、世界で10億人以上が不足していると言われています。特に日本人の状況は深刻で、東京慈恵会医科大学の調査によると、なんと日本人の約98%がビタミンD不足状態にあることが明らかになっています。この驚くべき事実は、私たちがいかにビタミンD摂取を意識すべきかを示しています。日本人が特にビタミンD不足になりやすい理由には以下のようなものがあります:
また、論文によると次のような要因もビタミンD欠乏の原因となります:
厚生労働省の最新の国民健康・栄養調査(令和5年・2023年)によると、日本人成人の1日あたりのビタミンD平均摂取量はわずか7.8μg(約312IU)にすぎません。これは米国やWHOが推奨する最低摂取量(15μg/日=600IU/日)の約52%に過ぎず、本文書で推奨している4,000IU/日と比較すると、なんと8%程度しかありません。
年齢層 | 平均摂取量(μg/日) | IU換算 | 推奨4,000IUに対する割合 |
---|---|---|---|
20歳以上 全体 | 7.8 μg/日 | 312 IU/日 | 約8% |
ポイント:
出典:令和5年国民健康・栄養調査(厚生労働省)および日本人の食事摂取基準(2025年版)
最新の研究では、ビタミンDが単に骨の健康だけでなく、全身の様々な健康面に関わっていることが明らかになっています。
研究によると、適切なビタミンDレベルを維持している健康な成人は、上気道感染症のリスクが半分になることが示されています。特にインフルエンザや風邪などのウイルス感染症への抵抗力が高まります。
ビタミンDは動脈壁の硬化を防ぎ、高血圧や動脈硬化の予防に役立ちます。また、インスリンの分泌を促進し、インスリン感受性を改善することで、2型糖尿病のリスクを約30%低減することが研究で示されています。
カルシウムの吸収を助け、骨密度を維持することで、骨粗鬆症や骨折のリスクを低減します。また、筋肉の機能を強化し、特に高齢者の転倒リスクを減らします。
ビタミンDはアルツハイマー病や認知症などの神経変性疾患のリスク低減に関連していることが示されています。神経細胞の保護や炎症の軽減に役立つと考えられています。
その他の健康効果:
米国医学研究所は、ビタミンDの推奨摂取量を以前の3倍に引き上げました。しかし、多くの専門家はさらに多くの摂取量が健康上のメリットを最大化するために必要だと考えています。
対象 | 推奨摂取量 |
---|---|
子供 | 1,000IU/日 |
青年・成人・高齢者 | 4,000IU/日(最低でも2,000IU/日) |
血中のビタミンDレベル(25-ヒドロキシビタミンD濃度)の目標値は38ng/ml以上が望ましいとされています。(40-70ng/mlが理想範囲)ビタミンDを100IU摂取するごとに、血中濃度は約0.6~1.0ng/ml上昇します。
ビタミンDを効率よく摂取するためには、食事と日光浴の組み合わせが最も効果的です。
15~30分間、週に2~3回、手足や顔を太陽に当てることをおすすめします。日焼けするまで浴びる必要はありません。日中(10時~14時)が効果的ですが、肌の状態や季節に応じて調整しましょう。
サプリメントの摂取を始める前に、まず血液検査で現在のビタミンD値(25(OH)D濃度)を確認することを強くお勧めします。これにより、ご自身の不足状態を正確に把握し、適切な摂取量を決定することができます。
検査に関する注意点:
現代の日本の生活環境では、東京慈恵会医科大学の調査で明らかになったように、約98%の日本人がビタミンD不足状態にあります。食事と日光浴だけでは十分なビタミンDを得ることはほぼ不可能です。そのため、年齢を問わず全ての方にビタミンDサプリメントの摂取を積極的に推奨します。特に以下の方々は優先的に摂取を検討してください:
重要な注意点:
当院を含む医療機関で処方されるビタミンD製剤(アルファロール®、ロカルトロール®、エディロール®など)は活性型ビタミンDであり、血中25(OH)D濃度を上昇させる効果はありません。これらは骨粗鬆症などの特定疾患の治療薬であり、本文書で説明している免疫機能向上や生活習慣病予防などの健康効果は期待できません。健康増進のためには非活性型のビタミンDサプリメントが必要です。
重要: 繰り返しますが活性型ビタミンD製剤は当院で処方する場合も含め、特定の疾患に対して使用する治療薬であり、健康な方の予防目的には適していません。健康効果を得るには、血中の25-ヒドロキシビタミンD濃度を上げることが重要です。これはビタミンD3(コレカルシフェロール)のサプリメントで実現でき、当院でもご相談を承っております。
※サプリメント摂取前にかかりつけ医にご相談いただくことをおすすめします。
健康長寿のためには若いうちからの継続的な取り組みが重要です。ビタミンDは簡単に摂取でき、コストも低く、多くの健康上の利点をもたらす栄養素です。
適切なビタミンD摂取は、医療費の削減にもつながる可能性があります。研究によれば、世界中の人々のビタミンD状態を改善することで、疾病の負担を大幅に減らし、医療費全体を約25%削減できる可能性があるとされています。
介護を必要としない健康な老後のために、今日から全ての方にビタミンDサプリメントの摂取を強くお勧めします。わずかな投資で、将来の健康に大きなリターンが期待できます。当院では、適切なビタミンD補給についての個別相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
ビタミンDの摂取方法や検査、サプリメントについてのご質問は、当院スタッフまでお気軽にご相談ください。あなたの健康状態に合わせた最適なアドバイスをご提供いたします。
さく内科クリニック